第2回「松枯れ対策と里山再生等を考える研究学習会」レポート

2014年2月6日 00時24分 | カテゴリー: 市民活動

~安曇野市民ばかりでなく、行政、議会、他地域からも参加者集う~

 第2回「松枯れ対策と里山再生等を考える研究学習会」について、安曇野市を考える市民ネットワーク・横地泰英さんのレポートを掲載します。

◆長野県の松枯れは全国で3番目
【パネラー1 奥原祐司さん=松本地方事務所林務課普及係、松尾敦さん=林務課林産係、森林保護専門員】
  長野県の「森林づくりアクションプラン」をご説明します。暮らしを守る森林づくり、木を生かした力強い産業づくり、森林を支える豊かな地域づくりを三本柱に、10の実行計画を立てています。松枯れ対策は、実行計画④の「災害に強い森林づくり」に含まれます。病害虫に強い森づくりを進めようということです。

 松枯れ被害は北海道、青森を除く45都府県に広がっています。平成24年の全国被害は64万㎥で、長野県は6万7千㎥。島根、鹿児島に続き3番目です。
 松枯れは、長野県内では旧山口村(現在は岐阜県に移行)で昭和56年に発見され、平成3年ごろからどんどん広がりだした。7年には5万5千㎥、22年には6万3千㎥、そして24年の6万7千㎥は過去最大の被害です。県内77市町村のうち49市町村で被害が出ている。木曽川に沿う木曽郡内と、天竜川沿いの南信・飯田上伊那がひどい。東信は千曲川沿いの上田、中信は犀川沿いの松本・安曇野、池田、大町。松本地方事務所管内の被害は平成24年1万1840㎥。

 平成12年に豊科、三郷で初被害が出てから、被害は10倍になったわけです。カミキリとセンチュウは、寒いところより暖かいところを好む。低く暖かい川下から、川上へと広がる。

◆里山を活用し、人との関係を結び直す
【パネラー2 斉藤一徳さん=四賀・里山のくらしを考える会代表】
 これまでの経緯は、2012年農薬散布が発表され、4地区で説明会が開かれた。空中散布を止めたい市民が「くらしを考える会」をつくった。住民意見を求めるため松本市がつくった「四賀地区松枯れ対策協議会」は賛成派ばかりだったので、反対派も中に入らないといけないという考えから参加した。2013年夏、無人ヘリによる農薬散布実施。ネオニコチノイド系農薬で、7㌶が10㌶、そして20㌶となった。

 くらしを考える会の構成員は四賀住民が77%だが、生まれ育ちが四賀住民は6%、2人だけ。ほとんどが移住者です。駒ヶ根市では空中散布で賛否が割れ、反対した住民は結局地区から出て行った(出て行かざるを得なかった?)「おめが反対したから松が赤くなった」というのです。四賀ではどうするか。里山をうまく活用していい方向に持って行く。地道にやるしかないんです。

 2013年6,9月の協議会で、松本市が農薬散布から更新伐に方針転換することを打ち出した。「反対運動のおかげで散布面積も小さく済んだ」という話も聞いた。ところが12月の協議会で再び大転換。有人ヘリによる散布に切り替え、無人ヘリの散布範囲を拡大するという。ある町会から市へ陳情があったと聞きます。

 県特別天然記念物の四賀千本松が2013年春から夏に枯れた。私たちは千本松周囲の整備や幼樹を移植する活動を展開しています。人と山の関係を結び直す試みです。戦中戦後70年間放置された森を70年かけて住民の手に取り戻す…。松枯れ被害木、伐採木を再生エネルギーとして活用する。地元温泉施設「松茸山荘」に薪ボイラーの設置、小規模発電所や薪ステーションの建設などを市に提案する。

◆再生可能な自然エネルギーとして利用を
【パネラー3 諌山憲俊さん=長野県林業士、烏川渓谷緑地森林保全チームリーダー】
 今、冬です。マツノマダラカミキリは秋に卵を産み越冬。卵はかえってサナギになり、春に羽化。別の木へ脱出する。6月中旬ごろです。このとき、マツノザイセンチュウを運ぶ。カミキリが枝の皮を食べるとき、木の中で繁殖していたセンチュウがカミキリの体の中に入る。マツは発病して弱り、ヤニが出なくなる。ヤニが出なくなるとセンチュウは爆発的に増える。

 ただ、松が枯れるのは、センチュウによる松枯ればかりではないと思う。烏川緑地の水辺エリアで枯れて伐倒準備をしたが、1年先送りしたところ、翌年みごとに緑が戻った。環境変化で土壌の菌が変わり、ナラタケ菌が入るとか、全部がセンチュウではない。明科・押野は、マツノザイセンチュウによるものです。いずれにせよ、まだ研究段階で、もっと資料を集めないといけない。

 アカマツとはどんな木か。パイオニアプランツ、先駆種といわれる樹木。幼年期、若年期の森林を形成し、極陽樹に類する。材としての用途は、建築用材として梁などの横架材、床材。また、陶器づくりの登り窯に使う薪。明科では瓦を焼く窯元がかつて多かったことから植林されていた。穂高のアカマツは年輪68年がかつての演習林に育ったもの。年輪50年が学者村に育ったものだ。半分以上は形状比120の「ソーメン立ち」。穂高は扇状地で地中は大きな石がごろごろ。直根がなく、形状比60の木でも風で倒れる。松枯れよりも多い。数年後、穂高も明科・押野のようになれば、押野と違い、地際から伐ることはできない。クレーンでつるし切りとなると、伐採費がかさむ。

 安曇野市で行われている松枯れ病対策は、
①薬剤使用によるマツノマダラカミキリの駆除。空中散布(有人ヘリによる広範囲散布と無人ヘリによる小範囲散布)、地上散布がある。効果の検証が不十分で、疑問もあるが、散布をやらないと松枯れが早くなることも考えられる。伐倒燻蒸は被害木処理のメイン。
②薬剤使用による予防措置。マツノザイセンチュウの駆除。保存したいアカマツ、未被害木の樹幹に薬剤を注入する。薬剤1本が2500円でそれが3~4本も必要。手間も金もかかる。
③伐木→造材→集材→搬出することで「資源」として利用。燃料化は、薪ボイラー、薪ストーブ、チップボイラーがある。薪ボイラーは今秋、天平の森に1台入った。2月に池田に1台、1年半後にはしゃくなげ荘に3台分が入る予定だ。私は薪ストーブの薪を売っているが、いま薪5㌧のうち1トンをアカマツにしてもらうよう頼んでいる。千軒の客ならば年2000㎥になる計算。安曇野で出る材は4000㎥打から、2千軒でまかなえる。チップ化はチップボイラー、堆肥、敷設用に。建築用材は、梁などの横架材、床板(フローリング)、階段、下地材に。建築用材は安曇野市穂高の林友ハウス工業が乾燥機、加工設備、集塵機などを設置。搬出された松枯れ被害木や間伐木を製品化できる態勢をすでに備えた。

 ①②③を比較すると、③の再生可能な自然エネルギーとしての利用がいちばん可能性がある。行政よりも市民が使う覚悟を決める。全国で火の手が上がろうとしている。

◆原点に立ち返り、歴史、環境、倫理に学ぼう
【パネラー4 林孝彦さん=安曇野市議、元ハーバード大専任講師】
 里山再生と松枯れ対策、農薬の空中散布は全国の喫緊の課題です。制約ある中で複雑な課題に対処するには、原点に立ち返る必要があります。過去、歴史、環境、倫理、思想に学ぶのです。1950年から1970年にかけての日本の成長期。欧米に追い付き追い越せで、公害問題が噴出しました。河川や自然は汚染しました。豊科の自然の中で育った私は「農薬、だいじょうぶ?」と聞きますと、「人には害がない」と大人は欺瞞の答えでした。

1962年、レイチェル・カーソンが「沈黙の春」。DDTによる環境汚染など先見にみちた著作です。
1972年、ローマクラブが経済成長に警鐘を鳴らしました。
2009年、鬼頭秀一、福永真弓編の「環境倫理学」。
①自然の生存権、自然と人間の共生を考える
②世代間倫理。私たちは未来世代への責任を負っている 
③地球有限主義。閉じた世界であり、地球資源を考える。

 里山再生、松枯れ対策の基礎は、直接的な1次対策と、発生処理の2次対策とがある。同時並行で議論し、処理しなければならない。