安曇野高橋節郎記念美術館開館セレモニー

素晴らしい美術館〜忘れてはならないこと

 穂高町出身で、現代工芸美術界を代表する漆芸術家・高橋節郎の町営美術館が「安曇野高橋節郎記念美術館開館」として開館、今日はそのオープニングセレモニー(開館記念式典)があった。私も町議として参列、関係者の挨拶や来賓の方々からの高橋芸術や美術館への高い評価を誇りに思うと同時に、開館後の運営は並大抵の事ではないとの思いも交錯し複雑な心境でした。
 美術館建設に7億円余りの税金が使われています。また開館後の管理運営費は、入館料等の収入だけではとうてい賄いきれるものではなく、赤字覚悟の事業なのです。それでも、多くの町民の強い願いや要望があっての事ならば理解も得られるでしょうが、実際には美術館建設に反対する署名運動などもあったわけですから、そのような経緯を忘れてはならないと思うのです。
 私もこの美術館建設には疑問があり、反対署名をした一人です。その時「小林さんは美術の先生だったのに、高橋芸術を認めないのか」とか「あの素晴らしさがわからないの」などと非難されたりして、美術館建設そのもと高橋作品の芸術性とをごっちゃにした議論になっていることも問題だと感じていました。当時の議会の審議も、そのような「ごっちゃにした」傾向が強かったと私は思っています。
 「もう出来上がったてしまったんだから、ゴチャゴチャ(批判めいたことは)言わずにこれからどう有効に活用していくかを考えましょう」と言うならば、どうして計画段階でその事がきちんと話し合われなかったのでしょうか。「ゼニカネ勘定と芸術・文化は別」と言う人もありましたが、税金は自分のお金ではないのですから簡単に「ゼニカネ勘定は別」などと言ってほしくはないのです。
 開館のお祝いにあたって、こんな事を書くのは心苦しいのですが、これが私の正直な気持ちです。おめでとう一色の挨拶の中で、穂高町議会の栗原議長さんが「美術館の経営はどこも苦しい・・・」との言葉を織り込まれていたことに、私は敬意を表したいと思います。
 最後に付け加えますが、私は高橋先生の作品の漆黒のひろがりの中に鮮やかにそして繊細に描かれた金色のその幻想的な世界は、とても美しいものと感じています。